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No.29 石橋凌 俳優

石橋凌  映画「犯人に告ぐ」曾根要介役

悪党を、どこまでも悪党と演じる俳優はたくさんいる。しかし、悪役の威圧感や存在感を表現しつつも、そこに、ほのかな悲しみ・温かさ・優しさを漂わせる演技ができるのは石橋凌しかいない。彼は、取材を終えたとき、そこにいた全員、カメラマンのアシスタントにいたるまで、一人一人と丁寧な握手を交わした。ものすごく温かい人間が、悪役を演じた時。そこに、複雑な心情、リアリティが生まれるんだと思う。

PROFILE

石橋 凌(いしばし・りょう)
1956年、福岡県生まれ。
1977年、ロックバンドARBにヴォーカリストとして参加、80年代に熱狂的な人気を獲得。
「さらば相棒」(82年・宇崎竜童監督)、「ア・ホーマンス」(86年・松田優作監督)を皮切りに多数の映画、ドラマに出演。近年はハリウッド、香港など海外作品への出演も増えている。
現在公開中の「ローグアサシン」にも出演。

僕はその役を演じるにあたって登場人物の履歴書を書く

石橋凌——どなたがどの役を演じるのか、あえて調べないまま、まずは原作を読みましたが、曾根要介が出てきた瞬間、これは石橋さんの役だなと分かりました。曾根は、石橋さんのためにあるような役と感じたのですが。
石橋「そうですか。でも、実は原作そのままには演じていないんです。原作の方が肉感的というか、ギラギラした雰囲気が濃いですね。映画化されるにあたって、脚本の段階で少しソフトなトーンに描かれていますね」 
——原作とのニュアンスの違い、を見つけるのも映画を見る楽しみです。石橋さんは、この役柄のどこにひかれて出演をOKしたのですか。
石橋「僕は役をいただいた時、どんな職種とか、どんなテーマとか、あんまり関係ないんですね。それよりも、人間がくっきり描かれているか、という部分に興味を持ちます。それは、自分の役だけでなく、他の役だけで、というのはすごく興味を持つところなんですね。そういう意味で、『犯人に告ぐ』にはとてもひかれましたね。誘拐事件の発生によって、登場人物同士が想いをぶつけ合う。エンタテインメント作品だけど、個々の感情のせめぎあいがあちこちにちりばめられています」
——出演依頼を受けて、原作にひかれた…その後、クランクインに向けて、どのような準備をされましたか。
石橋「僕は、その役を演じるにあたって、まず登場人物の履歴書を書くんです。その男がどこで生まれて、どういう家族構成でどんな持病があるか。左右の視力はいくつか。血液型は何か。体重も書き出して、クランクインまでに、増やしたり、減らしたり、それに極力近づけるようにしていますね。そうすることによって、その男がどんな時に怒り、悲しむのかが見えてきます」
——石橋さんが過去に演じられたどの役を見ても、例えば、威圧的だけど温かみもあるというように、多面的な人間性を感じます。それは、こういった役に入る前の綿密な準備から生まれるんですね。

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